AIを使った会社の動画は、AIが何をしたかで確かめる所が変わります。撮った動画を切る、字幕を付けるといった編集だけなら、中心になるのは元の素材や曲を使ってよいかです。映像や音楽そのものをAIに作らせたなら、公開の前に、他人の作品と似ていないかを確かめます。文化庁の資料では、AIが作った物でも人が作った物でも、著作権の侵害かどうかは同じ考え方で判断されると説明されています。
この記事では、AIの使い方ごとの確かめ方、似ていないかの見方、自社の動画に著作権があるかの考え方、残しておく記録を書きます。著作権の説明は、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」と「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を2026年11月3日に開いて確かめた所だけです。この記事は法律の助言ではありません。判断に迷う時は、社内の法務か弁護士に見てもらってください。書いているのは、株式会社ヒルウラ代表の高取です。ヒルウラは人の編集チームで累計30,000本以上の動画を納品してきた会社で、初稿をAIで作る道具「AI動画編集くん」を作っています。
AIで何をしたかで、確かめる所はどう変わる?
「AIで作った動画」と言っても、AIがしたことはさまざまです。まず分けます。
| AIがしたこと | 例 | 主に確かめる所 |
|---|---|---|
| 撮った動画を編集した | 無音を切る、字幕を付ける | 元の映像、出ている人、渡した曲を使ってよいか |
| 渡した素材から選んで入れた | 用意した曲や効果音を入れる | 渡す前に、その素材の使える範囲 |
| 映像、画像、音楽を新しく作った | 背景の映像、挿絵、曲を生成する | 他人の作品と似ていないか、道具の利用規約 |
| 人の声や顔を作った、変えた | 読み上げの声、顔の差し替え | 著作権とは別に、本人の了解、道具の利用規約 |
ヒルウラが作っているAI動画編集くん(近日提供)は、「編集」と「渡した素材から選ぶ」に当たる道具です。撮った動画から初稿を作り、曲は渡された物の中から使います。曲そのものは作りません。だから、使ってよい曲かは、渡す前に人が確かめます。道具が何をしているかは、使う道具ごとに確かめてください。
元の素材を使ってよいかは、AIを使わない時と同じです。他人の音楽や写真は社内研修の動画と著作権、撮影に写り込んだ物は動画の写り込みに書いています。人の声や顔を使う時の了解の取り方は、社員に動画へ出てもらう前の同意書をご覧ください。
公開する前に、何をどの順で確かめる?

文化庁のチェックリストは、生成の段階と利用の段階で判断が変わることに注意するよう書いています。社内で許諾を取る前提で検討するために作る場合などは認められる範囲があっても、ネットで配信すると、その範囲の外になることが多いという説明です。だから、一番大事な確認の場所は、公開の前です。
1. AIがしたことを分ける
先ほどの表で、動画のどの場面にAIが作った物が入っているかを書き出します。編集を外に頼んでいる時は、依頼先に聞きます。
2. 道具の規約を読む
チェックリストは、道具の利用規約を確かめて従うことが必要だとしています。会社の動画で使えるか、作った物の扱いはどうなっているかを読みます。規約は変わることがあるので、読んだ日を残しておきます。
3. 似ていないか見る
AIが作った場面を、検索で探して確かめます。やり方は次の節に書きます。
4. 記録を残す
指示と元の素材を残します。残す物の表は、後の節「何を残しておく?」にあります。
他人の作品と似ていないかは、どう見る?
どうなると、著作権の侵害になる?
文化庁の資料では、著作権の侵害には「類似性」と「依拠性」の両方が要ると説明されています。
| 言葉 | 意味 | AIで作った時の例 |
|---|---|---|
| 類似性 | 他人の作品の表現の特徴を、直接感じ取れる | 映像の構図や絵の表現が共通している |
| 依拠性 | 他人の作品に接して、それを自分の作品に用いた | 他人の作品をAIに入力した、題名やキャラクター名を指示に入れた |
作風などのアイデアが共通しているだけなら、類似性は認められないと説明されています。ただ、完全に同じコピーでなくても、創作的な表現が共通していれば類似性は認められます。アイデアと表現の境目は事案ごとに判断されるので、自社で決め切らないことが大事です。
指示に他人の作品そのものや題名、キャラクター名を入れると、依拠性が認められやすくなると考えられています。会社の動画を作る時は、「〇〇のような」と作品名や作者名を指示に入れない決まりにしておきます。
ただ、入れなければ安心というわけではありません。「考え方」では、使う人がその作品を知らなくても、AIの学習にその作品が使われていて、似た物が作られた場合は、通常、依拠性があったと推認され、侵害になり得ると説明されています(技術的に出力されない仕組みがある場合など、例外も書かれています)。だから、次の「似ていないか」の確かめは省けません。
実際には、どう確かめる?
チェックリストが例に挙げているのは、インターネットの文章検索と画像検索です。AIが作った場面の画像を検索にかけて、似た物が出てこないかを見ます。動く映像の似ている所まで見つけられるとは限らないので、完全な確認にはなりません。目立つ場面、長く映る場面、広告に使う場面から確かめ、心配な場面は使いません。
| 確かめる物 | やること |
|---|---|
| AIが作った映像、画像 | 1場面を画像にして、画像検索にかける |
| AIが作った文章、ナレーションの原稿 | 特徴のある文を文章検索にかける |
| AIが作った音楽 | 道具の規約を読む。社内で聞いて、知っている曲に似ていないかを見る |
音楽の確かめ方は、文化庁のチェックリストの例には入っていません。曲は似ているかを見つけにくいので、心配なら、使ってよい条件が分かっている曲に差し替えます。
似ていたら、どうする?
公開の前なら、その場面を外すか作り直します。「考え方」では、差し止め(公開を止めるよう求められること)は、故意や過失が無くても認められると説明されています。知らなかったから大丈夫とは考えず、公開の前に確かめます。損害賠償など、ほかの扱いは事情によって変わるので、実際に問題が起きた時は弁護士に相談します。
公開した後に動画を直す手順は、YouTubeの動画を公開した後に直すにはに書いています。
AIで作った動画に、自社の著作権はある?
ここは先ほどの話と別の問題です。先ほどは「他人の権利を侵害しないか」で、ここは「自社の動画が著作物(著作権で守られる作品)に当たるか」です。チェックリストも、この2つを混同しないように、社員の著作権の理解を確かめておくことが必要だとしています。
指示を出しただけだと、どうなる?
文化庁の「考え方」では、AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合は、著作物と認められないと考えられています。判断は1つずつ個別に行われ、次のような点を総合して見ます。
| 見る点 | 考え方 |
|---|---|
| 指示の分量と内容 | 表現を具体的に示す細かい指示は、人が創作に関わったと評価される可能性を高める。長いだけで、アイデアにとどまる指示は影響しない |
| 試した回数 | 回数が多いこと自体は影響しない。結果を見て指示を直しながら繰り返す場合は、認められることも考えられる |
| 複数から選ぶ | 選んだだけでは影響しない |
| 人が直した所 | 創作的な表現といえる加筆や修正を加えた部分は、通常、著作物と認められる。ほかの部分には影響しない |
人が編集した部分は、どうなる?
「考え方」には、人が作品を作る時に一部分にAIが作った物を使った場合、問題になるのはその一部分だけで、人が作った部分まで著作物でないとされるわけではないと書かれています。
撮った動画をAIで編集した場合に、どこまでが誰の創作になるかは、この資料だけでは言い切れません。少なくとも、話す内容、撮影、人の判断で選び直した構成や直しがどこにあるかを記録しておくと、後から説明できます。
他社に制作を頼んだ動画の権利は、AIの有無とは別に契約で決めます。動画を外注した時の著作権をご覧ください。依頼先がAIを使っているかも、見積もりの時に聞いておきます。
何を残しておく?
チェックリストは、生成に使った指示など、作った過程を確かめられるようにしておくことが望ましいとしています。侵害していないことの説明にも、自社の著作物だと説明する時にも使えるからです。
| 残す物 | 中身 | 何に使えるか |
|---|---|---|
| 使った道具 | 名前、使った日、読んだ規約の日付 | 規約が変わった時の確認 |
| 指示 | AIに出した指示、渡した参考の素材 | 他人の作品を入れていないことの説明 |
| 元の素材 | 撮影の素材、曲や写真の購入の控え | 使ってよいことの説明 |
| 確かめた記録 | 検索した日、確かめた人 | 公開の前に確かめたことの説明 |
| 人が直した所 | 直しの履歴、版ごとのファイル | 人の寄与の説明 |
少人数の会社なら、1本ごとのフォルダに短いメモを置くだけでも始められます。チェックリストは、社内のルールを決めておくことや、問題が起きた時の対応をあらかじめ考えておくこと、社員の著作権の理解を確かめておくことも挙げています。動画の社内の決まり全体は、会社の動画のガイドラインの作り方に、この項目を足すと揃います。
AIに渡す素材そのものの扱い(社外秘の素材を渡してよいか)は、著作権とは別の話です。AI動画編集で社外秘の素材を扱う前に確かめることに書いています。
よくある質問
AIで字幕やカットを入れた動画は、公開して問題ありませんか?
著作権の面では、編集そのものより、元の映像や曲を使ってよいかが先です。そのうえで、AIが作った絵や音が入っていないかを確かめます。字幕の間違いなどの中身は、著作権とは別に人が見ます。
道具の規約に「商用利用できる」と書いてあれば、大丈夫ですか?
規約は確かめる項目の1つです。文化庁の資料では、侵害かどうかは既存の著作物との類似性と依拠性で判断されるので、規約を読んだうえで、似ていないかも確かめます。
AIで作ったことを、動画に書く必要はありますか?
文化庁の資料で確かめた範囲では、公開する動画に表示する決まりは見当たりませんでした。ただ、著作権とは別に、公開先の決まりがあります。YouTubeヘルプでは、本物のように見えるAIの生成や改変(実在の人が言っていないことを言っているように見せるなど)は開示が必要で、字幕の作成や台本の案などは不要の例に挙げられています。また、チェックリストでは、AIが作った物を著作物として取引の対象にする時は、相手に適切に説明することが求められています。
他社にAIで編集を頼む時は、何を聞けばいいですか?
どの工程にAIを使うか、映像や音を新しく作るか、使う素材の権利は誰が確かめるか、の3つです。依頼の時の聞き方は、AI動画編集を依頼する前に知っておきたいことに書いています。
文化庁の資料は、どこで読めますか?
文化庁のAIと著作権のページに、考え方とチェックリストがまとまっています。
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